地域に根をはり、地域で完結する人々の街。-矢口・六郷・蒲田散策

商圏分析大田区編2回目の今回は、ウォーカーやランナー、サイクリストのメッカ、多摩川沿岸から手芸店で有名な蒲田までを歩きましょう。

たまリバー50キロ

多摩川サイクルロード
大田区羽田の多摩川河口から、多摩の羽村市にある羽村堰まで約50kmに渡って続く、自転車・歩行者専用道路が、「たまリバー50km」です。かつては自転車道として断続的に設置されていましたが、現在は河川バーベキュー場やキャンプ場も整備され、都内の貴重な散策路として整備されています。
23区内でたまリバー50kmに接するのは、大田区と世田谷区のみですが、大田区側には桜並木もあり、休日には多くの人でにぎわいます。

矢口・渡し跡

奥の柵の向こう側に船着き場があった。

奥の柵の向こう側に船着き場があった。

江戸時代、多摩川は東海道の要所であり、多くの渡し船がありました。

現在ではその場所に橋が架かり、以下のように対応しています。

都道2号線 丸子橋=丸子の渡し跡
国道1号線 多摩川大橋=矢口の渡し跡
国道15号線 六郷橋=六郷の渡し跡
東京都道・神奈川県道6号 大師橋=羽田の渡し跡

特に矢口渡は、江戸以前の古代からの渡し場であり、現在でも交通の大動脈であり続けています。

久が原・昭和のくらし博物館

昭和くらしの博物館
昭和20年代~40年代までならば、どこにでもありそうな、しかし今となっては懐かしさを感じる佇まいの一軒家。

久が原にあるここは、昭和26年に建てられた個人住宅をほぼそのまま保存している、国の登録文化財「昭和のくらし博物館」です。

元々は、建築士だった小泉孝氏が自宅として建てられました。その後1990年代に入り使われなくなったところ、小泉氏の長女で生活研究家の小泉和子さんが保存し私設博物館として公開。
当時の家財道具はもちろん、生活空間をそのままに保存しています。

居間にはちゃぶ台、お座敷には裁縫道具や足踏みミシンをはじめ、当時の子供のおもちゃや勉強机などが、まるで「いまここで生活している」といった風情で展示されています。
当時を知る人はもちろんのこと、マンション育ちの私のような者にもほんのりと懐かしい心地になり、不思議と「帰ってきたな」と感じる空間です。

昭和くらしの博物館

六郷神社

六郷神社
大田区南端、六郷一帯の総鎮守して親しまれている六郷神社。創建は古く、平安時代後期と言われています。
鎌倉時代、源頼朝が奥州征定の際、白旗を立てて戦いでの勝利を祈願したと言われ、その後社殿を造営しました。
境内の「浄水石」と神門前の太鼓橋は、このとき寄進されたものと伝えられています。
浄水石
石橋

また、六郷神社では毎年1月7日に、男の子の開運・健康・出生を祈願する行事として「七草こども流鏑馬祭り」が開催されています。
この流鏑馬は、これまた源頼朝の時代に端を発するといわれ、東京都の無形民俗文化財にも指定されています。

蒲田駅前

東京23区南部の玄関口、JR蒲田駅の発射メロディーにもなっている「蒲田行進曲」でもおなじみの、蒲田駅までやってきました。
蒲田駅周辺は、東口に大田区役所や区民ホール・アプリコがあり、このあたりは大田区の中心地となっています。蒲田西口アーケード街
一方西口に足を向けると、総延長600mにわたるロングアーケード街が姿を現します。
この蒲田西口商店街は昭和20年代、戦後の闇市から育った商店街です。飲食店はもちろんですが、衣料品店が多いのも特徴です。
これら衣料品店の中には、かつては生地や毛糸を専門に取り扱っていた店舗も多くあるとか。
また、こちらのアーケード街ではありませんが、関東地方にお住まいで手芸・工作を趣味としている人は一度はお世話になったことがあるだろう「ユザワヤ」の本店も蒲田駅西口にあり、こちらも毛糸店から始まっています。
ユザワヤ誕生の陰には、蒲田という土壌そのものの歴史と特色があったのですね。
ひつじの時計

矢口・六郷・蒲田の街の様子

今日ご紹介してきた多摩川沿い。この周辺の光景は、以前商圏分析連載で取り上げた23区東側、江戸川区や江東区の光景と似ています。
ここ大田区の場合も国道1号線や環八など、交通の大動脈に面した通りにはマンションやテナントビルが立ち並び、裏の路地に入れば昔ながらの木造住宅が軒を連ね、またその合間に町工場があるという状態です。

六郷の住宅街の一角。1階が工場で2階が住居となっている。町工場の密集する街の典型的な住宅形態。

六郷の住宅街の一角。1階が工場で2階が住居となっている。町工場の密集する街の典型的な住宅形態。

しかし、江戸川区・江東区が再開発や都市計画が進んで新築住宅が増えている状況に対し、大田区の南部はそれほど開発が進んでいません。
ひとつ路地に入れると住宅が非常に密集しており、昔にタイムスリップしたかのような街並みが続きます。
そう。下町散策が好きな方にはたまらない街並み、と言えますね。

蒲田はこれらの地区よりも循環が進んでいますが、やはり少し中心街から離れると同じような光景が広がります。

建物の循環が進んでいないということは、そこに住む世帯もまた、昔からその町に住んでいる世帯であることが多いです。
特に蒲田地区は、自区内通勤をする人の割合が23区の中でも最も高い地区の一つと言われています。
そのように地元に根を張り、そこで完結する人々の生活の様子が、この街並みからもうかがいしることができるのです。

test エディター:津倉 深根雄
Web業界(主にEC業界)に十数年身を置いていた、モータースポーツ大好きなフリーライター。
夫婦でシクロツーリスト(自転車旅人間)。新婚旅行は本州~九州縦断の自転車旅。
この時、「人の心を動かすのは、サービス内容や集団ではなく、人のキャラクターとの触れ合い」なことを悟る。