最先端の街の隣に数百年の歴史を残す街が。新宿御苑~市ヶ谷・神楽坂散策

新宿区商圏分析シリーズ散策編の1回目は、「新宿御苑」と、市ヶ谷・神楽坂を歩きます。

広大な敷地を誇る東京のオアシス、『新宿御苑』。
そして、坂の街であり、旧町名が残る地域の市ヶ谷・神楽坂。

共に数百年の人々の営みのうえに成り立つこの地域について、その歴史を中心に紹介します。

涼しい風と澄んだ空気が吹き抜ける『新宿御苑』


江戸時代の新宿一帯は幕府の家臣であった信州高遠藩・内藤氏の江戸屋敷や私有地があり、「内藤新宿」と呼ばれていました。

その江戸屋敷があった場所そのものが、現在の新宿御苑です。
東京の大規模公園や大学、また官公庁などは江戸期の諸藩の江戸屋敷
たとえば新宿であれば、新宿御苑だけでなく防衛省も尾張徳川家の上屋敷跡に設置されています。

話を新宿御苑にもどすと、明治39年に皇室用の庭園として整備されましたが、戦後国民に開放され、現在では多くの人々に親しまれています。
有料(大人200円、年間パスあり)ということもあり、周辺の明治神宮外苑や代々木公園よりも桜の時期でなければ人も少なく、ゆったりと過ごせます。
広場の芝生に寝ころべば、そこが東京であることを忘れてうたたねしてしまう居心地の良さ。

新宿駅から向かう場合、テイクアウトやパン屋、弁当店が多いですから、駅で食べ物を用意し、心地よい芝生でピクニック、ということも気軽にできます。

また、実際に新宿御苑に行くとわかりますが、ここれだけ周辺よりも気温が下がり、多少空気も透明感が増しています。
夏は暑く冬は寒いのは当然ですが、夏は2~3度は涼しく、木陰の風が気持ちいい。冬は・・・日が傾くとかなり冷えます。
すぐそばに新宿南口があり、マルイやバスタをはじめ繁華街が広がっているため、温度差がさらに強く感じられます。


新宿御苑周辺を見てみると、都立新宿高校の先から四谷区民ホールまで、御苑に沿う通りには、人気のイタリアンレストランやカフェ、隠れ家的なバーなどがあり、その多くがゆったりと落ち着けるお店です。

江戸時代にタイムスリップ?旧町名を残す『市ヶ谷』

新宿御苑を離れ新宿通りを進み、四ツ谷駅で外堀通りに入り坂を下ると、そこは市ヶ谷。
市ヶ谷を歩くと、市谷台町、市谷鷹匠町、市ヶ谷砂土原町、市ヶ谷長延寺町、市谷佐内町、矢来町、二十騎町など、他の地区ならば「市ヶ谷(または牛込)〇丁目」で括られそうな町域ひとつひとつに名がつき、しかもそれらは、時代劇にも出てくるような、味のある地名です。

他にも、『鷹匠町』『二十騎町』『矢来町』などほぼ区画ごとに地名が分かれている。

それもそのはず。旧牛込区や旧四谷区は、昔の地名をそのまま残している地域なのです。

1960年代半ばから70年代、23区の各自治体で住居表示を実施、同時に町域統合が進みました。
新宿区でも例にもれず西側から統合が始まり、新宿駅周辺は軒並み新宿、西新宿、北新宿という名で統一されていきます。

しかし、これらに反対したのが、旧牛込区や旧四谷区の住民。
文化の破壊と受け取ったこれらの区の住民が町域統合を拒否。そのため、かつてその地がどのような地であったかがわかる、そのままの地名を残すことになったのです。

たとえば鷹匠(たかじょう)町。
『鷹匠』というのは、江戸時代に幕府や諸藩に設けられた職名で、狩りのための鷹の飼養や調練、鷹狩を司どった人々が住んでいた場所です。
市ヶ谷台町であれば、かつて坂の上や高台の場所を「台町」と言い、現在の港区白金辺りも江戸期には『品川台町』と呼ばれていました。

このように、昔呼ばれていたそのままの地名が現在も正式な地名になっています。

ただし、町域統合を拒否した地域は住居表示も拒否していたこともあり、現在でも表示が進んでいないという状況もあります。

非常に細かく地名が分かれている場所ですから、住居表示は進めてほしいと願う次第です。

変わりゆく坂の街『神楽坂一帯』

早稲田通りの大久保との交差点「坂上」から、外堀通りとの交差点「坂下」まで約440mの急な坂道。そう。そこは神楽坂。

神楽坂

メイン通りには下駄や草履店など江戸情緒の残る店、チェーンのカフェも多く今と昔が同居し、休日になると狭い通りに人が溢れます。特に春先の花見の時期は、外堀通りの桜並木から神楽坂へと人が流れ、さらに賑わいを増すのです。

そんな神楽坂。メイン通りも楽しいですが、本当の楽しみはその脇にある無数の細い路地。

神楽坂の東側の路地裏。ラーメン、蕎麦、中華、イタリアンからフレンチまで、あらゆる食がここにある。東側の路地は意外に飲み屋少なく、西側の路地にバーがあつまっている。

メイン通りや1本入った程度の路地は、古くからの個人店はあまり見られず、チェーン店ばかりになってしまいました。わたしが通っていた味のあるおかみさんが営んでいた甘味店も、数年前に姿を消してしまっていました。

しかしそのさらに奥、自動車どころか自転車も入れないような小路は、未だ個人店が健在、むしろ新店舗もかなり完全に趣味の店が点々と存在してみます。

奥の住宅への引き込みだが、ここにも3店舗の隠れ家的な店が並ぶ。思わずのぞき込みたくなる

また、この地区は料亭も多く、それらは表通りには面していません。

料亭に続く道。この路地で以前、芸者さんが歩いているところに出会った。江戸情緒を感じる路地

ランチも提供している料亭もありますから、迷い込んでみるのも良いかもしれませんね。
ただし、店舗の性質上暗黙のドレスコードがある場合もありますので、ジーンズなどは避けた方がよさそうです。

千代田区との境、市ヶ谷橋から四谷方面を望む。台風一過の澄んだ空、流れる雲によって、ダイナミックな光景が広がっていた。これも東京の空。

test エディター:津倉 深根雄
Web業界(主にEC業界)に十数年身を置いていた、モータースポーツ大好きなフリーライター。
夫婦でシクロツーリスト(自転車旅人間)。新婚旅行は本州~九州縦断の自転車旅。
この時、「人の心を動かすのは、サービス内容や集団ではなく、人のキャラクターとの触れ合い」なことを悟る。